今回は、イタリアンレストラン伊和香で、実際に行っている野菜の保存についてご紹介します。
(シリーズで、いろいろな食材の保存方法をご紹介していく予定です)
皆さんのご自宅ならではの保存方法などあると思いますが、鮮度を保つって本当に難しく大変です。
毎日、新鮮な野菜を仕入れて消費していくなれば、苦労は無いのですが、そうもいきませんよね。
伊和香でも青果の調達は、多くて週二回なので保存は必須、オープンしてこの一年間、本当に苦労してきました。科学的な根拠は聞かれると詳しくは説明できませんが、理論だけではなく実際に日々実践して、現在辿りついた方法をご紹介します。
(より良い方法を探っていますので、新しい発見があった場合は記事を更新します)
野菜は大切な食材であり、農家さんが心を込めて作られています。野菜を傷んで破棄してしまうこと、少しでも減れば幸いです♪
柔らかい野菜ほど傷みやすい
大抵の野菜は茎系にしろ葉菜類にしろ、成長して太陽に照らされると硬化していきますので、そうなるとあまり美味しくありません。生食に適しているものは何か?聞かれれば、迷わずサニーレタスを推します。品種改良された、「サラダほうれん草やサラダ水菜」等は葉の柔らかさとエグ味が抑えられているのが特徴ですが、反面傷みやすいです。
すぐに使用しない葉野菜は、できるだけ購入したその日のうちに保存処理を試してみてください。
保存のポイント
葉菜類の保存は、基本的には冷蔵庫で保管します。冷気に弱い、水分蒸発やエチレンガスの発生、「生きている(呼吸をする)」、以上を常に意識することが大切です。
保存に於ける傷みは2種類あります。
- 細菌の繁殖と腐敗
植物は、細菌に対し予め抵抗を持っていますが、弱ってくるとその抵抗も低くなる。
人の怪我と同じで、傷口(折れたり、損傷)から細菌が広がってしまう。 - 冷気
特に大葉やバジル、ミントの葉、柔らかいサニーレタスなどは、非常に冷気に弱い。
そのため、出来るだけ直冷は避ける。 - エチレンガスによる老化
(下記参照)
エチレンガスの基礎知識
エチレンガスは無色で特殊な甘い臭いのガスです。人体に対する毒性はありませんが、可燃性があるので注意が必要です。比重は0.975(空気は1)あり、環境中に広く存在する気体で野菜や果物などが発する植物ホルモンの一種です。別名「成熟ホルモン」「老化ホルモン」と言われています。エチレンガスは花が受精し、果実が出来る過程や果実が完熟後に腐る過程に多く発生します。また花も開花する時と傷み始めた時に大量のエチレンガスを発生します。つまり、植物のエイジング(老化・経年)を進める役割を持っているものです。この植物ホルモンが作用することで呼吸が盛んになり「着色する」「軟らかくなる」「糖分の増加する」など、いわゆるおいしく熟した状態になります。しかし常に成長を促すホルモンのため、熟しすぎてしまい腐敗の原因にもなります。カビの発生源にもなってしまいます。(放置すれば最終的には種だけが残ります、自然の摂理ですね)
収穫後もエチレンガスは放出され続け、周辺の野菜や果物がエチレンガスを吸着してしまい腐敗が早くなってしまいます。そのため農家では出荷前の貯蔵および輸送中に追熟が進みすぎないように、エチレン除去剤(鮮度保持剤、分解剤)を使用して鮮度を保ち過熟を抑制することがあります。エチレンガス生成量は農作物によって異なりますが温度が8度以上だと発生しやすいとの研究もありますので、貯蔵の際の温度管理も重要です。
作物の種類によってエチレンガスの発生の度合いは異なり、多く放出する作物としてはリンゴ・梨・メロン・柿・アボガド・ブロッコリーなどがあり、その他にもみかん・洋梨・トマト・桃・パパイヤなどが多いと言われています。作物の成長にエチレンガスは必要不可欠なものですが、作用を受けすぎてしまうと収穫した作物と近くの野菜や果物までも痛める要因になりますので注意が必要です。
冷蔵庫の野菜室にリンゴを入れておくと、食材や食品も痛みが早くなってしまうのもエチレンガスの影響です。換気が行われない密閉空間ではその影響をさらに受けやすくなります。保存するときはラップ・ポリ袋(保存袋)・箱などで密閉しておきましょう。未熟な野菜を早く食べたい場合は、リンゴなどエチレンガスを出す果物などの働きで成熟が進むので良いでしょう。
エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響 エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響 | コラム | セイコーエコロジア (100nen-kankyo.jp)
保存方法
- 丁寧に扱う
- 葉を折らないよう注意する
- 既に傷んでいる箇所は予め取り除く
- 通気性の良い紙で包む
- 出来るだけ全体を包むことが大切
- 冷蔵庫の冷気から保護し、蒸発する水分が必要以上に冷却されることを防ぐ
- 保湿効果を狙う(袋に入れることで相乗効果)
- 袋に入れる
- 他の野菜へのエチレンガス効果を防ぐ
- 保湿
野菜の水分は常に蒸発している。萎れていると(傷んでいるわけではない)細菌に対する抵抗が低くなる。
特に大葉やハーブ(バジル・ミントを除く)は良く水洗いした後、紙を濡らして包んでおくと、葉先もしっかりして3週間以上持ちます(必ず直冷を避ける)。 - 専用の保鮮袋に入れると、エチレンガスや細菌対策に有効。ここでは保鮮袋の紹介はしませんが、大抵はエチレンガスを吸着袋外に透過させるタイプと、発生を抑えるタイプがあるようです。
伊和香でもコープの商品(吸着透過)を使用しています。エチレンガスを透過させるので、他の野菜へ影響を防ぐためにも、保存する全ての野菜に袋を適用しています。
- 冷蔵庫で保存する
- 冷気が直接当たらない場所に保管する
家庭用冷蔵庫での野菜室は、配慮されているのでそれほど気にしないで良いかも。
野菜室以外で保存する場合は冷気に注意 - 野菜を立てる
葉物野菜を収穫前の状態で保存することで、野菜に余計なエネルギーを浪費させず、鮮度を保つことが可能。更に葉の表面積が広がり、呼吸がしやすくなる。 - 葉に圧力を加えない
他の食材や、壁などに押し込んで長時間圧力を加えたままにすると、とろけが発生する。
- 冷気が直接当たらない場所に保管する
レタス系の保存(お湯浸け方法)
サラダで使用したあとの千切ったレタスなど、残ることありますよね!
そんな時、少々手間ですがとっても良い保存方法をご紹介します。(これは、私が前職でカット野菜工場視察の際、教えていただいた方法です)
45度〜50度のお湯に約一分程浸してから冷水にとるだけです。
注意点としては、レタスを入れた瞬間お湯は一気に冷めるので、たっぷりめに用意してから浸してください。
レタスの酵素が活性化する?(うろ覚え)ことで萎びていた葉っぱもシャキシャキになりますし、さらに切り口や折れたところの変色を長期間かなり抑えることが可能です。
ちなみに、レタス全般可能ですよ!葉の柔らかなレタスはつける時間(三十秒とか)を短くして試してください。
変色したレタスは苦味も強く感じますし、見た目や味も鮮度よく保存できますよ?
最後に
これまで述べてきました通り、生鮮野菜は生きています。そして、常に成長していくものです。
種から芽が出て茎は伸び、やがて花をつけ実ができて、枯れていきます。野菜は全てこの成長過程のどこかで収穫されています。保存って、生きたまま外気の影響を極力避け、成長を抑えること、と言えると思います。生産者である農家と、生あるものを頂くことに感謝し、食材を大切にしたいですね。
もっと良い方法を知っているよーとか、参考になった方など、是非コメントくださいねー!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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