久しぶりに、食品添加物シリーズの投稿となります。
今回は第4弾、「保存料」について学術的観点並びに自身の経験及び考察、帰結として何故伊和香で使用しないのかを纏めお伝え致します。
是非、最後までお読み頂ければと思います。
過去の記事もお読みで無い方は、お時間ある際是非リンクよりご覧くださいませ☺️
保存料(防腐剤)
食材の保存性を高めることは人類にとって最も重要な課題であり、いかにして食べ繋ぎ、飢えを凌ぐか。保存は人類が生き残っていく為に、編み出された知恵の結晶の一つと言えると思います。
乾燥、燻製、塩蔵、糖蔵など様々な保存方法があり、現在に至っても重要な保存技術ですが、何れも食材中の「自由水(以下参照)」をいかに低く抑えるか、この一点に絞られた保存方法だと言えます。
(燻製は、乾燥と同時に低温加熱、抗菌作用を働かせる保存方法です)
一方で、科学的に作られた保存料はph調整によるものや、微生物自体に何らかの状態変化を与えることで、増殖を抑えたり防いだりします。
では、どのような保存料があるのか見ていきたいと思います。
自由水とは
食品中で微生物が利用できる水分のことを指します。例えば、果物や野菜の中に含まれる水分が自由水です。この自由水が多いと、微生物が増殖しやすくなり、食品が腐りやすくなります。
水分活性(Aw)とは
自由水の割合を示す指標として「水分活性(Aw)」があります。水分活性は0から1の範囲で表され、1に近いほど自由水が多く、微生物が増殖しやすくなります。例えば、新鮮な果物の水分活性は高く、乾燥した食品の水分活性は低いということになります。
水(自由水)は化学的に何かの物質と結びついていると蒸発できません。この特製を活かして、揮発割合を調べる事で水分活性の割合を算出しています。
水分活性が0.85Aw以下であれば腐敗せず、0.7以下であれば人体に影響を与えるカビも育たないと言われています。
例えば塩漬けなど水分が多くある様に見えますが、実際には水(自由水)とナトリウムイオンが結びついて、食品中の自由水は減少します(蒸発する自由水が少ない)。塩分濃度が高い塩蔵は(濃度によりますが)、自由水が限りなく少ないので干し椎茸などと同等といえます。
自由水を奪う
砂糖の添加も塩と同様、浸透圧(自由水と結合)によって水分活性を低下させ保存性を高めることが可能で、代表的な食品としてジャムがあげられます。ジャムは非常に多量の糖が使用されているため保存性が高く、水分活性に於いてはこれもまた干し椎茸と同等といえます。
凍結も、自由水を奪うという意味においては同様で、水分活性が低下するため冷凍保存は微生物が増殖しにくいわけです。
より詳しい内容を知りたい方、参考にしたサイトを共有いたします。大変素晴らしいサイトで、調理師だけではなく食に携わるかたプロアマ問わず、絶対に知っておいた方が良い知識だと思います。是非お時間ある時にご覧くださいませ。
参考:水分活性と微生物の増殖
リンク: 水分活性と微生物の増殖 | 食品微生物学(検査と制御方法)|基礎と最新情報を解説|木村 凡 (foodmicrob.com)
保存料の種類
保存料には主に以下のような種類があります。
安息香酸ナトリウム
安息香酸ナトリウムは、既製品に幅広く使用される食品添加物の一つです。この化合物は、食品の保存期間を延ばすために使用され、特に酸性に傾く食品に効果的です。では、安息香酸ナトリウムはどのようにして作られ、私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか。気になる健康リスクも含めて文献を参考に纏めます。
どのように作られるのか
安息香酸ナトリウムは、安息香酸と水酸化ナトリウムを組み合わせて作られます。
また、安息香酸は自然界にも存在し、シナモンやクローブ、トマト、ベリー類、プラム、りんご、クランベリーなど多くの植物に含まれています。ある種の細菌は、ヨーグルトなどの乳製品を発酵させる際に安息香酸を生成することもあるようです。
用途
安息香酸ナトリウムは、食品防腐剤として最もよく知られていますが、医薬品や化粧品、パーソナルケア製品、工業製品にも使用されています。食品では、主に酸性よりの製品に使用され、炭酸飲料、瓶入りのレモンジュース、漬物、ゼリー、サラダドレッシング、醤油などの調味料に添加され、有害なバクテリアやカビの増殖を抑制し、腐敗を防ぎます。
保存性を高めるメカニズム
- 酸性環境での効果:
食品や飲料のpHが低い(酸性)場合、安息香酸ナトリウムは安息香酸に変わります。この安息香酸が微生物の細胞内に吸収されます。 - 細胞内のpH低下:
微生物の細胞内に安息香酸が取り込まれると、細胞内のpHが低下し、pHが5以下になると、微生物の代謝活動が著しく減少します。 - 酵素の阻害:
特に、グルコースの嫌気性発酵を行う酵素であるホスホフルクトキナーゼ(phosphofructokinase)の活性が低下します。これにより、微生物のエネルギー生成が阻害され、増殖が抑制されます。
このようにして、安息香酸ナトリウムは微生物の増殖を効果的に防ぎ、食品の保存期間を延ばす役割を果たします。
健康リスク
発癌性
世界で約50カ国で安全性の高い食品添加物として認知位置付けられており、医療でも使用されている科学物質ですが、一方で研究によってさまざまな意見があるようです。一部の研究では、安息香酸ナトリウムが体内でビタミンCと結合することで、ベンゼンという発がん性物質に変化する可能性が指摘されています。phが酸性よりの製品(特に飲料)に使用されると言うことは、酸味のあるビタミンCを含む可能性は必然と高いと考えられます。食べ物でも、食べ合わせが悪いものがあるように、添加物も単体では悪さはしなくても、何らかと結合してしまうことで、牙を向くことがあるかも知れません。
参考:Why Preservatives Aren’t So Bad: Sodium Benzoate
複数の悪影響(マウス実験)
潜在的な毒性調査で、安息香酸ナトリウムの濃度により多岐にわたる負の影響を及ぼすことが観察されています。参考にした記事では、研究結果を詳細を開示してくれているので、ご興味あるかたは是非最後の結論だけでもお読み頂けたらと思います。
- 体重や食物摂取量に影響を及ぼす可能性
- 濃度が250mg/kg及び500mg/kgに増加すると、赤血球や白血球の数が有意に減少
- 糖質過酸化を示す
- 肝臓及び腎臓機能指標に影響、特にATLのレベルが上昇
- 安息香酸ナトリウムの過剰摂取は炎症性メカニズムを促進する可能性あり
あくまで動物実験の範囲だが、より多くの研究を必要としているため、消費制限に関する規制の施工を推奨しています。
参考:The potential toxicity of food-added sodium benzoate in mice is concentration-dependent
まとめ
冒頭で述べさせて頂いた通り、食材の保存性を高めること、そしてその技術や知恵は、常に飢えとの戦いの中で先人の方々が知恵を絞り紡いできた証だと思います。
他の食品添加物は製品をよく見せるために使用することが多いのですが、保存料の目的はその字の通り不純ではありません。また、遠くに運ぶためには微生物をいかに制御するか、とても重要な課題を克服できたのも、保存料の貢献は外せません。
しかしながら、生産性を高める為、すなわち利益を最大化するために一度に多く作り、保存料で衛生リスクをカバーする発想も多く散見します。それが悪いと言うつもりはありませんが、参考文献より一部ご紹介させて頂いた通り、全くのノーリスクではなく、さらなる研究を必要と発言する科学者が居られることも事実です。
何事にも言えることだと思いますが、俯瞰して捉え自分自身にとって何が適切で、そうでは無いのかを考えること、これが最も大切なことかも知れません。
みなさんいかがでしたでしょうか?難しい表現もあったと思いますが、是非感想などコメント頂けましたら大変嬉しくございます☺️
それでは、次回の投稿でまたお会いしましょう!
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